1.白球少年

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1.白球少年

「ゲームセット!!」  球審のかけ声で、僕たちの夏がおわった。  甲子園を目指して汗にまみれた二年半。毎朝四時半起きの生活と、絶えることのなかった擦り傷。ニュースなんかでは冷夏なんて言っているけれど、今年の夏空は、いつにもまして青く感じた。  僕は高校生活の青春のすべてを野球にかけてきた。  好きではあったものの、決してうまかったわけではない。  小学校、中学校と常にベンチウォーマー。高校に入っても二年間は、時折回ってくる代走要員としてくらいしか出場の機会には恵まれなかった。  それでもなんとか三年の春に、ようやく掴んだレギュラー。  八番ライト。  昔、読売新聞の日曜版に、「ライパチくん」なんていうマンガが連載されていたっけ。僕はライパチ君ほどには活躍できなかった。でも、それでも自分のできる限りの練習をこなしてきた。なんとかみんなの足だけは引っ張らないように。それだけを考えてひたすらにボールを追った。  県大会の一回戦。結果は2―7。敗退。  僕個人の成績は四打数一安打。唯一の安打は、スクイズ。     
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