第一章 漆黒

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第一章 漆黒

カツン カツン カツ、カツッ 朝方、中川麻美は何かの金属音で目が覚めた。 体を起こして窓の方を見ると、 ベランダの鉄柵に 大きなカラスがとまって 首を前後に振っていた。 漆黒の羽の色。 時折、鉄柵を嘴で突いている。 あの音か… じっと見てると、 カラスと目があった。 ガラス玉のようで、 それでいて するどい光を帯びたその目は 辺り一面の光を取り込み 何かを探すように くるくると回っていた。 そして、狂ったように激しく また首を 前後に振りだした。 始めは小さく動いていたが、 だんだん大きく動き出した。 目に見えないほどに 早く動くカラスの頭。 体から頭だけ離れて 飛んで行きそうな勢いだった。 トンボがクルリと 一回転する頭の動きに似ていた。 更に動きが激しくなったので 麻美は気持ちが 悪くなって思わず 目をそらした。 それでも気になって 再び見るとカラスの姿は、 もうベランダから消えていた。 麻美は改めて 布団に入り目を閉じた。 麻美は左胸が痛くて 寝ぼけながら 右手で左胸をさすった。 すると、ひどく痛む場所があり 目をあけた。 体が動かなくて 目だけを どうにか動かして 左胸の方を見た。 すると、そこに一心不乱に 麻美の左胸を嘴で突く 先程の大きなカラスの姿があった。     
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