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麻美の目の前に大型バスが猛スピードでバックして来ている。
テールランプが赤く点滅していた。
「バックします」
無機質な声が響き渡る。
「バックします」
「バックします」
機械的な女性の声がトンネル内に響いていた。
エンジンをフル回転させドンドン勢いを増す路線バス。
ガシャン!
バスの右後ろ部分がぶつかった衝撃でヘコみガラスが飛び散る。
トンネルの壁にぶつかっても勢いは止まらなかった。それどころか、壁に車体を押し付けている。
トンネル内にある歩道と車道との仕切りのガードレールさえも乗り越えなぎ倒す勢いは、何かに取り付かれたようでもあった。
呆然として立ち尽くす麻美の目前にバスのバックライトが眩しく光を放って向かってきていた。
後ずさりする麻美。
「いやぁ! 助けてーー!」
ドンッ
という何かがぶつかる鈍い音も構わずにどんどんバックするバスは、決してスピードを緩めなかった。
麻美の前方にいた人達や全てのものを次々にはねてゆく。
「きゃあああああぁ――――」
バキッ
ガシャン!
麻美の体は大きく跳ね飛ばされて壁に激突した。
ずるずると壁に沿って血を壁に塗りつけるようにして落ちていく麻美の体。
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