第一章 漆黒

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「い、いやあぁ ――――――――!」 断末魔の叫び声が 静かな住宅街に響き渡った。 閉まっていたはずの部屋の窓は大きく開き カーテンが風にゆっくりと揺れていた。 悪夢に、うなされながら、 びっしょりと全身に 汗を掻いて麻美は目を覚ました。   恐る恐る左胸を見下ろした。 何もなってない。夢だった……。  もそもそと起き出して、洗面所へ向かった。  毎朝、洗濯をするのが麻美の日課だった。 朝早くから働きに出る麻美の両親。 母の負担を少しでも減らす意味で 麻美が物心着いた頃から朝起きると 洗濯機を回し 学校へ登校する前に 洗濯物を干してから登校している。  いつもの様に、 はじめに洗濯機に 粉洗剤を入れて低水位まで水を溜める。 溜まったら回し始めて 回し始めてすぐに、 ちゃりんちゃりん と金属物が洗濯槽に当たる音がする。 一時停止ボタンを押して 止めてから 袖をまくって 手を洗濯槽に入れてみる。 おかしいな。 何もないのに。 また、回し始める ちゃりんちゃりん… 一時停止を押して 手を再び突っ込んで中を探る。 突然、洗濯機が回りだし 突っ込んだ右手に蛇のように 洗濯物が絡みつく 「ひぃぃ!」   麻美が考える間もなく ぐるぐると激しく回り 麻美のうでが どんどん中に取り込まれ、 奥へ奥へと引っ張られていく。     
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