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プロローグ
薄暗くなった長いトンネルの中。チカチカと点滅する古い蛍光灯。
大抵、いつもここのトンネルの蛍光灯は、どこかが切れかけている。
駅から家まで帰るには
このトンネルを必ず通らねばならない。
地元でも有名な幽霊トンネルだ。
心霊スポットとして良く雑誌やテレビの取材も来ている。
中川麻美は、ガードレールで仕切られた歩道をゆっくりスマホの画面をタッチしながら歩いていた。
バタバタと騒がしく走る足音に顔を上げて音のする前方を見る麻美。
前方から大学生くらいの若い男が髪の毛を振り乱し、もの凄い形相で走ってくる。
ーーー何? あの人。
だんだん近づいて来るその男は
「来る!……来るぞー!!!」
と叫んでいる。
麻美の肩にドンッと思いきり、ぶつかって通り過ぎていった。
肩を抑えながら後ろを振り返って不審な男を睨んだ。
ーーーもう少しでスマホをおっことすところだったじゃん!
ムッとする麻美。
男は、なおも何かに追いかけられているように何度も振り返っては必死に走り続けていた。
「うわあああああああああーー!」
狂ったように声を上げている。
麻美は怪訝な顔で
「えっ!? なんなのよ」
そう言いながらも妙な男の視線を辿ってみる。
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