2/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 そこからの僕の練習は大きく変わった。学校のプールは屋外にあるから春休み中は学校での泳ぎこみはできない。だから毎日近所の温水プールに通った。3000mを超える泳ぎ込みの日々。これを休むことなく続け、夏を迎えた。始めてから5月まではタイムがどんどん縮んだ。このまま県大会に行けるのではないか?そう本気で思った。  でも、そう簡単にはいかないものだ。5月の下旬からはタイムが伸び悩み始めた。僕は練習量をさらに増やす。毎日5000m近くの泳ぎ込みは身体にもかなり負荷はかかったのだが、あの計画のためだ。僕は昨日までそれをやり切ってきた。  しかし結果がついてこない。1秒半の壁が厚い。結局僕は記録がボーダーラインまで届かない状態で明日の大会に臨むことになった。  その日の夜中1時。なかなか寝付けないところで僕のスマホに1本のメッセージが入ってきた。咲子ちゃんからだった。咲子ちゃんから僕個人宛にメッセージが来ることはとても珍しい。 「前も言ったけど、私は絶対に行くから。絶対に勝つから」  送られてきたのは無味乾燥な1文だけ。僕はその文を何度も何度も噛みしめる。そして、 「わかった。その時は」  そう返信した。 「その時は?」 「いや、何でもない」  咲子ちゃんからの問いにそう返事した後、僕はクマがベッドに入って「おやすみ」と言っているスタンプを送った。  泣いても笑っても、明日で全てが決まるのだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!