僕の本番

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僕の本番

 ギラギラと照りつける太陽がプールの水面で乱反射する。僕たち200m自由形の最終組に出場する選手は飛び込み台の前へと出向いていった。 「2コース 江川典男君」  僕がプールに向かって一礼をすると、後輩達からの声援が耳に入って来る。僕はそれを聴きながらゴーグルを装着した。  全員の紹介が終わり、ホイッスルが鳴り響く。僕は飛び込み台の前に立った。 「位置について、用意」  パン!  号砲が鳴り、僕たちは一斉に飛び込む。勝負の幕開けだ。  できるだけ遠く、できるだけ強く……肩をグイッと前に伸ばして水を掴みとる。  できるだけ小さく、そしてできるだけ速く……キックの感触に確かな手ごたえを感じながら僕は100mのクイックターンを決める。  残り100m。腕の動きが鈍るところだが、自らに鞭を打つ。呼吸の回数を減らす。このまま失速するわけにはいかない。僕はスポーツも、勉強もからきしだし、取り柄という取り柄なんてない。でも、でも、この戦いだけは負けるわけにはいかないのだ。  ラスト25mのラインが水中に見える。ここからはなりふり構わずだ。今まで残っていた力を絞りに絞って、さらに遠くへ腕を伸ばす。  そして最後、黄色いタッチ板に右手が触れた。  電光掲示板に記されたタイムは2分28秒85。自己ベストを大きく更新し、全体で5位のタイムでのフィニッシュだった。県大会行きを決めた瞬間である。
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