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「いや、『紙様』じゃ」
「だから、『神様』でしょ」
「いいや、『紙様』じゃ」
「『紙様』ってことは、『神様』ってことじゃないの?」
「違うな。その方はもっと、大きな存在でおられる。儂なんかが、言葉にするのも尊い。言うなれば儂は、『妖精』ってとこかな」
「『妖精』って、森に住んでいるんでしょ」
「そこらかしこにいる。人間と同居している者もたくさんいる。その中の一人が、儂、『再生紙様』ということじゃよ」
「そんなにたくさんって見たことないよ」
「お前、『八百万の神々』を知らんのか。『神様』だって途方もない数であられるのに、『妖精』が少ないはずがないではないか」
「『八百万の神々』というんだったら、あなたも『神様』ということになるんじゃないの。だって、『八百万の神々』って、一人ひとりが技術者で、地球を創生してきたんでしょ。科学技術にたけた『神様』や土木技術にたけた『神様』、気象を司る『神様』、農耕、食品、衛生……、ありとあらゆる『神様』が、この世をお作りになった」
「そうだ。だが、儂は、『再生紙様』じゃ。『神様』の製造された中のひとつで、もっとも新しい存在。『妖精』のなかじゃ、新参者扱いされておる」
「ふーんっ」
言葉が止まった。
――君が、『神様』でないと困るんだけどな……。
だって、『神様』じゃないとネット小説に応募できないじゃん。
『紙様』も『神様』も発音は同じなんだから、構わないと思うんだけど……。
俺は、ドキュメンタリーを書こうと閃いたのだった。しかし、嘘は書きたくない。何とか、コイツの口、いや、言葉から、『神様』といわせて、貧乏から脱出するのだ。締め切りまで、後、二日。起死回生を狙うのだ。
昨夜は、『紙様』、『神様』の押し問答で、あまり寝られなかった。
目覚めたのが十時過ぎで、まだ、頭がボーっとしている。
確かに、夢ではない。その証拠に『紙様』は、宙に浮かんだままだった。
とにかく、洗顔することにした。洗顔しながら、あることに気が付いた。これは大変重要な事だった。
これは言うべきことではないか。少々迷ったが、言ってあげなければなるまい――。
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