『紙様』お願いっ!

6/7
前へ
/7ページ
次へ
「くそ、寝たふりしやがって、わかってるんだぞ。無視はよくないぞ。無視は」 「ダメか……。ホントに寝てるかもしれない」  ――そういえば、『原作者』のオッチャン。締め切りに間に合ったんかな? いや、俺が、三日間、意識がなかったのだったら、オッチャンも書けてないはずだ。アハハハハ、自業自得だ。ヘヘヘヘヘッ。 「?」  俺はあることに気づいた。    『原作者』のオッチャンが、こっちの世界へ返事が出来たということは、繋がっているんだ。ということは、『異世界』。俺のいる世界は、『異世界』なんだ。俺があっちへ行って、あっちの世界の話を書く。オッチャンは、こっちの世界に来て、小説を書く。これで、今回の失敗はチャラにできるぞ。  なんせ次の応募作品ジャンルは、『ファンタジー』、『異世界』。これで、決まりだ。 「聞こえてるか、オッチャン!」  返事はない。 「まあいいや。よし、明日から頑張るぞ!」  目標が決まって、安心したせいか。『紙様』のことが気になりだした。『紙様』は何も言わず宙に浮いている。 「ところで、『紙様』。いつまでいるの?」 「儂は、次の呼び出しがあるまで、何処へも行けんわい」 「あの呪文で?」 「妖精に呪いの言葉は、ちょっと、合うわんな。――それより、さっきから聞いてると、お前さん、『異世界』にどうやって行く気じゃ?」 「『原作者』のオッチャンが、文章でうまく、チョイと書いてくれれば――」 「そうは都合よくいくもんじゃない。『原作者』と話ができると、お前さんに気づかせたのは、儂が、術を使ったからなんじゃ」 「えっ、じゃあ、あっちの世界と繋がってるんじゃないの」 「繋がってるさ。儂が、術を使えば、あっちの世界へも行ける」 「じゃ、使ってよ」 「いやじゃ、かなりの力を使うんでな。復活するのに時間を要する」 「お願い! この通り」  俺は両手を合わせた。 「いやじゃ」 「俺は生活がかかってるんだよぉ」 「それは、お前さんの都合じゃろ」 『紙様』は横を向いたが、トイレットペーパーであるため、あまり見分けがつかない。 「頼みます」  と『紙様』の右手を引っ張った。その瞬間、巻かれてた紙が一直線に宙を舞った。 「止めろーっ、死ぬー」  『紙様』が叫んだ。  見ると『紙様』が、少し小さくなったような気がした。  それでも構わず、 「お頼み申しますっ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加