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「くそ、寝たふりしやがって、わかってるんだぞ。無視はよくないぞ。無視は」
「ダメか……。ホントに寝てるかもしれない」
――そういえば、『原作者』のオッチャン。締め切りに間に合ったんかな? いや、俺が、三日間、意識がなかったのだったら、オッチャンも書けてないはずだ。アハハハハ、自業自得だ。ヘヘヘヘヘッ。
「?」
俺はあることに気づいた。
『原作者』のオッチャンが、こっちの世界へ返事が出来たということは、繋がっているんだ。ということは、『異世界』。俺のいる世界は、『異世界』なんだ。俺があっちへ行って、あっちの世界の話を書く。オッチャンは、こっちの世界に来て、小説を書く。これで、今回の失敗はチャラにできるぞ。
なんせ次の応募作品ジャンルは、『ファンタジー』、『異世界』。これで、決まりだ。
「聞こえてるか、オッチャン!」
返事はない。
「まあいいや。よし、明日から頑張るぞ!」
目標が決まって、安心したせいか。『紙様』のことが気になりだした。『紙様』は何も言わず宙に浮いている。
「ところで、『紙様』。いつまでいるの?」
「儂は、次の呼び出しがあるまで、何処へも行けんわい」
「あの呪文で?」
「妖精に呪いの言葉は、ちょっと、合うわんな。――それより、さっきから聞いてると、お前さん、『異世界』にどうやって行く気じゃ?」
「『原作者』のオッチャンが、文章でうまく、チョイと書いてくれれば――」
「そうは都合よくいくもんじゃない。『原作者』と話ができると、お前さんに気づかせたのは、儂が、術を使ったからなんじゃ」
「えっ、じゃあ、あっちの世界と繋がってるんじゃないの」
「繋がってるさ。儂が、術を使えば、あっちの世界へも行ける」
「じゃ、使ってよ」
「いやじゃ、かなりの力を使うんでな。復活するのに時間を要する」
「お願い! この通り」
俺は両手を合わせた。
「いやじゃ」
「俺は生活がかかってるんだよぉ」
「それは、お前さんの都合じゃろ」
『紙様』は横を向いたが、トイレットペーパーであるため、あまり見分けがつかない。
「頼みます」
と『紙様』の右手を引っ張った。その瞬間、巻かれてた紙が一直線に宙を舞った。
「止めろーっ、死ぬー」
『紙様』が叫んだ。
見ると『紙様』が、少し小さくなったような気がした。
それでも構わず、
「お頼み申しますっ」
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