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「無理なお願いなのは分かっている。でも、頼む。宮迫さん、このまま、あかりとして生きてほしい!」
春斗のたっての懇願に、あかりはしばらく考えた後、俯いていた顔を上げると春斗に言った。
「うーん。もう一度、そのことを踏まえた上で、みんなと話してみるな」
「…‥…‥ああ。宮迫さん、ありがとう」
難しい顔をして顎に手を当てて考え込む仕草をするあかりに、春斗はふっと息を吐き出した。そして引き締めていた口元を少し緩めると、さもありなんといった表情で言った。
「あかりに憑依したのが、宮迫さんで本当に良かった」
「うん?」
「何でもない」
困惑したように首を傾げてみせるあかりに、春斗はほのかに頬を赤くし、ごまかすように早口で言った。
そして、春斗は先程の自分のーーそして優香の言葉を思い出す。
あかりとして生きてほしい、かーー。
そんなのは、ただの一方的で身勝手な望みだ。
むしろ、宮迫さんにぶしつけなお願いをしているのは俺の方だろう。
春斗は自嘲するように片手で顔を押さえると、薄くため息をついたのだった。
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