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『チェイン・リンケージ』。
今や知らぬ人がいないのではというほど有名なオンラインバトルゲームだ。
典型的な対戦格闘ゲームに過ぎなかったチェイン・リンケージが、社会現象になるまでヒットしたのは二つの特徴的で斬新な宣伝とシステムによる。
一つは本作が有名なゲーム会社同士のタッグでの合同開発だったということだ。また、斬新なテレビCMと相まって今や空前絶後の大ヒットゲームとなっている。
そしてもう一つが、従来の格闘ゲームとは一線を画す独特なシステムだった。最先端のモーションランキングシステムに、プレイヤーは仲間とともに爽快感抜群の連携技を繰り出せることで臨場感溢れるバトルを楽しむことができる。
そんなオンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の大会は、個人戦とチーム戦、二つの形式に分類されていた。
「う、う~ん」
立派な寝癖がついた髪をかき上げながら、海のように明るく輝く瞳をした少女が一つあくびをする。
「今日はここまでだな…‥…‥」
「そうか」
「…‥…‥ああ。もう少し、頑張ってみるけど、ランキング入り、無理そうだったらごめんな」
隣に座っている少年の言葉にそう答えると、しばらく少女はテレビに映るゲーム画面にしか目に入っていないかのように抱きしめんばかりの勢いでコントローラーを操作していたのだが、だんだん、うーん、と眠たそうに目をこすり始めてしまう。
眠気を振り払うようにふるふると首を振ったものの効果はなかったらしく、結局、少女は隣に座っていた少年ーー彼女の兄である雅山春斗にぽすんと寄りかかって目を閉じてしまった。
そのうち、先程より幼い顔をさらした少女がすやすやと寝息を立て始める。
肩口に感じるそのぬくもりに、春斗はほっと安心したように優しげに目を細めて少女を見遣る。
「あかり…‥…‥」
「ーーっ」
寄りかかってくるあかりの華奢な体を、春斗はそっと自身のもとに抱き寄せようとした。
だが、春斗はあかりを抱き寄せることはできなかった。
その前に、不意に目を覚ましたあかりがあろうことか春斗を両手で突き飛ばしたきたからだ。
「い、いてぇ!」
「…‥…‥お兄ちゃん。何しているの」
一瞬で顔を真っ赤にしたあかりは、鋭い眼差しで春斗を睨みつける。
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