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「宮迫琴音ちゃんを二人にすることができるーー分魂の儀式における『補足魔術』のことが書かれている魔術書を探し出してきてほしいのだ。その魔術書さえあれば、あかりちゃんは生き延びられるはずだ」
深夜、白いベットに横たわり、眠り続けているあかりの横に立つと、春斗の父親は前もって呼び寄せておいた黒コートに身を包んだ少年の方へと振り向いた。
「その魔術で、あかりは本当に助かるのか?」
「むっ?貴様、我の魔術を信じていないようだな」
春斗の父親が口にした不満に対して、少年は咎めるように言った。
「言ったであろう。我は、魔術で琴音ちゃんを二人にすることができるのだ」
「それは、その宮迫琴音という少女があかりになるということではないのか?」
あっけらかんとした笑顔でそう答える少年を、春斗の父親はきつく睨み付けた。
「否、琴音ちゃんをあかりちゃんに憑依させて、今にも潰えようとしているあかりちゃんの命を補うのだ。実質上はあかりちゃんとなる」
春斗の父親の疑問に即答した少年は、そのまま淡々と続ける。
「まあ、もっとも、琴音ちゃんの時もあるがな」
少年の言葉に、春斗の父親の顔が強張った。
彼は何を言っているのだろう?
宮迫琴音という少女を、あかりに憑依させることで、今にも潰えようとしているあかりの命を補う?
そのようなこと、できるはずがないのに。
「まあ、できるはずがないと思っているだろうな」
少年は、春斗の父親の心を見透かしたようなことを言った。
「だが、可能だ。我の頭脳にかかればな」
呆れた大胆さに絶句する春斗の父親に、少年はぐっと顎を引く。
春斗の父親は真剣な表情で少年に訊いた。
「本当にその魔術を使えば、あかりは生き延びられるのか?」
「可能だ」
間一髪入れずに即答した少年は、真顔で春斗の父親を見つめると腕組みをしてみせる。
春斗の父親はあかりを見下ろすと、苦しそうに顔を歪めた。
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