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一度、口にしてしまえば取り返しのつかない、たった一つの言葉。
「本当に、あかり…‥…‥なのか?」
「…‥…‥あかりって、誰だ?」
春斗の言葉に、あかりはきょとんとした顔で不思議そうにこちらを振り返った。
迷う暇も考える必要もない。
それならば、導き出される答えはもう一つしかないからだ。
春斗は謎の義務感に急かされるように言葉を続ける。
「ーーなら、あんたはオンラインバトルゲーム『チェイン・リンケージ』の第一回公式トーナメント大会の準優勝だった宮迫琴音か?」
「うーん、まあ、そうかな」
「ーーっ」
あかりがてらいもなくそう告げると、春斗は糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちる。
喜べばいいのか、悲しめばいいのか、それさえも分からなかった。
「マジか」
春斗は改めて、あかりを見ながら頭を抱えた。
雅山あかり。
もうどこにもいない少女の名前。
眩しく輝く夢を、未来を掴みとるはずだった大切な妹の名前。
だが、それはもう叶わぬ未来。
終わった物語が再び、紡がれることはない。
だけど、俺は知っている。
妹が死んだその日から、俺と妹の物語は本当の意味で始まりを迎えたのだということをーー。
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