超・妄想【雨の日】

特別な日、とっておきの雨の日

賑やかな子どもの声が、薄灰色の雲に覆われた空の下で響き渡る。目の前の遊びに夢中の子ども達には、じめっとした梅雨の空模様などお構いなしだ。

雨さえ降らなければ、思いきり外で遊べるのだから。

保育園の年長さんクラス、すずらん組の保育室で、おままごとをしている数人の女の子と離れて、保育士と二人、折り紙を熱心に折る女の子。高い位置で黒髪をふたつに結んだ、みかちゃん。

「あのね、きょう、パパがかえってくるの！」

少々舌足らずな言葉を声高くして、一番の宝物を見せてくれる時のような瞳は、テーブルに散らばる折り紙の中の金や銀より輝いている。

保育士はその輝きに目を細めて、少し大袈裟に「そうなの？」と驚きを見せる。あらかじめ母親に聞いていた話ではあるが、単身赴任や出張が多いらしいそうで、今回は少し長めの出張だったようだ。

折り紙に小さな手を置いたまま、ピンク色の頬をふわっと濃く染めて、みかちゃんは微笑む。

「パパがかえってきたらね、いっしょにおほしさまみるのー」

保育士の手元で出来上がりつつある折り紙が、ひらりと指から滑り落ちた。

今日は七夕。

空は……厚い雲に覆われている。