前編

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学校のパンフレット用に写真とコメントをしばらく載せて欲しいと頼まれて、しばらくの間、実際に県内に配られていた。 N君はと言えば、8人の中でもどちらかといえば勉強では下のほう。 何度か「勉強を教えて」と頼まれて教えたけれど、 結局のところ彼の成績が上がることはなかった。 一年の夏休みを終えて、登校するとその彼が変貌を遂げていた。 真っ黒だった髪をほとんど金色にしていて、 着ている服も前はジャージだったのがブランド物。 ただし、身だしなみに気を使っているかといえばそうでもなく、寝癖はつきほうだいだったし、せっかくの服もしわしわ。 カーステレオでSPEEDを大音量で流しながら、 「怖くて乗れないんだ」と言っていた車で毎日、登校するようになった。 (当時、すでにSPEEDはブームが下火になっていて、僕はと言えばGRAPEVINEを熱心に聴いていた頃。) 担任の先生に聞いた話によると、 毎朝、6時に起きて大音量でSPEED。 夜も2時くらいまで大音量でSPEED。 ご家族の方が少し参ってきていて大変な状況で、 でも、変に刺激するのも良くないから今までどおりに皆も普通に接して欲しい。 クラスには女の子が一人だけいて、 この子はとても可愛ら しい顔をしていた。
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