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ーーー耳障りな目覚ましの音が鳴る。
予め大きめに設定しておいたその音に苛立ちながら、手を伸ばして携帯のアラームを切る。
ぼんやりした頭で布団から這い出た僕は、先ほどまで見た夢を思い返す。
(ーーまた、あの夢)
小さい頃から、僕は自分が死にかける夢を何度も見てきた。
中世のヨーロッパのどこかだろうか?ダサいけど、少し高貴そうな衣装に身を包んだ俺は、腹に何か刺されたのか、いつまで経っても血が止まらなかった。朦朧とする意識の中、金髪の誰かが俺を抱えてポロポロと涙を零していた。
その人は、確か俺の兄だった人だ。名前はーー何だったかな。
(というか、夢に出てくるだけの奴に設定なんていらないだろ。俺も律儀だよなぁ)
夢に出てくるのはあの2人だけだが、なぜか俺は彼らの設定については覚えていた。
金髪のイケメンな俺の兄は、本来国王になるべきはずだった人間で、その髪色のように明るく、朗らかで、賢くて、優しい奴だった。
そんないい奴な兄を、何故か失脚させて国外追放して兄の代わりに王様になったのが、この俺に似たクズ野郎だ。
(アイツ、敵の俺が死ぬってのになんで泣いてくれたんだろ。お人好しにもほどがあるし)
俺も俺で、そのおにーさまに何を言いたかったんだろうか。
まあ、ただの夢だから気にしなくていいだろうけど。
と、そこまで考えたところで、部屋の扉がノックされる音と、ぶっきらぼうな声が聞こえてきた。
「天音ー、起きたか?ご飯できたぞー」
「…起きたよ!今行く」
まあ、夢のことは今はいいや。
今日は一応記念すべき、俺ーー四葉天音(よつばあまね)、高校生活スタートの日なんだから。
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