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1章 再会
新生活を始める時、誰だってワクワクが止まらないものだ。
新しく生活して行く場所、そこで取り巻く人たちの変化。そして新しい場所での出会い。
まあ、かくいう俺もないと言ったら嘘にはなる。
「今日から高校入学だってな。緊張してるか」
「まあ、ちょっとはね。知り合いもいないし」
「そーは見えないけどな。お前、全然表情変わんねーし」
大人しく朝食のパンをモグモグ食べる俺を見て少し呆れた様子で俺よりまあまあ年上の男が眺める。
四葉伊呂波(よつばいろは)。俺の父親の従兄弟で、ワケあって俺の保護者になってくれることになったお人好しだ。
一応親戚?ということになるだろうが、初めて会ったのは去年で日が浅い。正直、父親の従兄弟という話も嘘に聞こえたが、ちゃんと証明書もあったので本当のことなのだろう。
「ま、せっかく新天地に来たんだ。新しい友達ができるといいな」
そう言って机の向こうから大雑把に撫で回すその手は、俺より少し大きくて、懐かしい感じがした。
その仕草に、なにか既視感を覚えそうになる前に口に出す。
「…俺、前のとこでも友達いなかったから。多分ボッチだと思う」
「そう決めつけるなって。案外、出来るかもしれないだろ?」
俺のネガティブな発言に苦笑しつつも、やはり彼は僕の頭から、しばらく離れずにワシワシと撫で回し続けるのだった。
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