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「っと、すみません。大丈夫…でしたか?」
「…平気だ。けど、気をつけろ」
一瞬、言葉が詰まりかけたのだが、相手には気付かれなかったらしい。
金色のサラサラな髪の毛、少し長めの前髪から覗く整った顔立ち。そして、記憶にあるものより少し若いその声。
(…まさか、な)
「次から気をつけます、失礼しました」
気のせいだ、と思い込みたい気持ちと、これ以上関わりたくない、と心の奥から湧き出る気持ちに従って足早にその場から立ち去ろうと彼の横を通り過ぎたその時、腕を強く掴まれる。
「ーーアンジェ?」
(ーーうわ。マジか)
この時、「なんだコイツ?今時流行りの厨二病か?」と思ったわけでも、「イタイイタイイタイ!何この人、いい歳して異世界に住んだことありますな自分アピール?イったいよぉおおおお!!」と思ったわけでもなんでもない。むしろその方が良かった。
残念なことに、俺は夢の中だけとはいえ前世の記憶を多少なりとも持ち合わせている人間で。
俺の腕をますます強く掴んでくるこのイケメンの容姿と声が、前世での俺の“兄”そっくりであったのだ。
さらに、彼から前世の自分の名前だったらしいその名前で聞かれたせいか、数日前までついぞ思い出せなかった彼の名前が、俺の脳内に呼び起こされた。
(ーーヤベェ。コイツ、“レオン”かも)
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