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レオン・フォン・ブリュックトゥルス。
前世の俺だった奴の兄で、本来なら国王となるべき存在だった奴だ。
けれどある事情で国外追放になってしまい、繰り上がりで王になった俺に復讐を遂げた男だ。
……まあ、あの夢では死にそうな俺になぜか泣きそうな顔をしていたが。
(この様子だともしかして覚えてたりする?面倒なことになりそうだな…)
今も俺の腕を掴んで離そうとしない手を一瞥後、凝視するおそらく前世の兄だろう奴へ視線だけ向ける。
まあ、ここでの対処方法は1つしかないか。
「…あの。腕、痛いんですけど」
「え?ああ、悪い」
困ったように眉をひそめてそう告げれば、彼は慌てたその手をパッと離してくれた。
痛いのは本当だったのでやれやれ、と思いながら掴まれた場所をさすりながら視線を逸らしながらボソリと告げる。
「あと、俺日本人なので。そんな可愛らしい外国名な訳ないじゃないですか」
「……それもそうか」
人違いだったようだ、すまない。
明らかに声のトーンが下がったソイツは、そのまま俺の横を通り過ぎようとして。
「ーーあ、やっぱり待って」
思わず、今度は俺が通り過ぎざまの彼の腕を掴む。
先程自分の妙な思い込みを否定した相手から、引き止められるとは思わなかったのだろう。驚いたように目を見開いて固まる男に、俺は当初の問題からの解決策としてお願いをする。
「化学室の場所教えてくれない?このままだと、授業に遅れちゃう」
「……」
俺のお願いを聞いて、ソイツは明らかに目が半眼となりじとりとこちらを見つめてくるが、仕方ないのだ。
前世の因縁から離れるよりも先に、まず目の前の授業に遅れるという問題を解決する方が俺にとっては大事なことだった。
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