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「……あとはこの角を曲がれば化学室だ」
「なるほど、ここだったか」
前世の俺の兄らしき人物は、急な申し出にも関わらず親切についてきて教えてくれた。いい奴だな、前世の時から知ってたけど。
「助かったけど、アンタはいいの?授業」
「問題ないよ。これから生徒会の仕事をやるところだったから」
「へぇ、頭良いんだな」
さすが元国王候補だっただけある。生徒会とか、リア充の集まりじゃん、2次元の話だけかもしれないけど。
「いや、単に担任にすすめられただけだ。内申点にもいいし、せっかくだからと思って引き受けただけだよ」
「推薦でもやるだけすごいじゃん。俺なら頼まれたら絶対やらないかな、面倒だし」
まあ、そもそも勧められることはないだろうけどな。そんなことを思いながら思わず口元が上がってしまう。
彼も、前世の頃から変わらないようだったから懐かしく感じたのだろう。
そうすると、何故か目を丸くされてから、ほんの少しだけ、目が細まる。
「ーーなあ。お前、やっぱり、」
彼が何かを言いかけたところで、本鈴のチャイムが鳴り響く。
「あ、やっば遅れる!ここまで助かった、ありがとう!」
授業に遅れそうになったことを思い出した俺は、慌てて踵を返しても目的地へ走り出す。
おざなりに礼を言った彼に、もう二度と会わないことを強く願いながら。
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