恋にこがれてふられてふられてガール

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 そこで私は、こんなにも情け容赦のない男どもとしか出会えない運命とサヨナラする為に、京都の自由時間を抜け出して、悪運を断ち切れると評判のとある神社を目指しているのだ。  なのに迷子。すっかり迷子。  こんなことならシングル女子のみんなと一緒に、嵐山でスイーツを食べに行けば良かった。なんて思っても後の祭り。集合時間は刻々と迫っている。まずは人通りのあるところに出て、誰かに道を尋ねなければ。あー、もう京都って日本屈指の観光地じゃないの? なんで誰も歩いていないのよ。さっきから(みやび)に寝そべる猫の姿しか見かけていないし。  と、細い路地の向こうに、見慣れた水色のシャツと深いグレーのチェックのズボンが目に入った。ウチの高校の制服だ。 「ねぇ! ちょっと待って!」  立ち止まって振り向いた男子生徒の顔を見て、呼び止めた事を後悔した。 「なんだよ」  不機嫌そうに答えたのは、中澤龍弥(なかざわりゅうや)。  私の失恋ダイアリーの、第一章を飾る男子だ。 「な、何やってんのよ。こんなとこで」 「見りゃわかんだろ」  龍弥がアゴで示した方角を見ると、木立に囲まれた石段と赤い鳥居が見えた。でも、そこに掲げられた神社の名前は、私が探しているのとは違う知らない名前だった。 「お参り?」 「まぁな。安納(あんの)もか?」 「イヤ、私はちょっと道に迷っちゃって」     
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