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その時、”ギィィ~”という音とともに、誰もいないトイレの
ドアが開いた。
「ええっ?」
この寺は何年も前に住む人もいなくなり、今は荒れ放題になっている。
当然トイレを使う人間など自分以外にいるはずもない。
さっきまでの悲しみが一瞬にして恐怖に変わった。
”ギギギギィ”とゆっくりと開くトイレのドアから目が離せない。
”バタン”と音がしてドアが開ききった。
いやな汗が額を伝う。
何も出て来ない。
意を決して覗き込む。
古い和式便器があるだけ。
「なんだよ、びっくりさせんなよ」
「……がほ……か」
「え?」
空耳か?いや確かに声がしたぞ。
「……がほしいんか」
「ちからがほしいんか」
地の底から響くような声が聞こえる
どこだ?
あたりを見回した時に、古びた便器の中から”ずずず”と重い音が響き渡る。
「な!!!」
”ピカーーーーツ”、便器の中から閃光弾のような真っ白な
発光体が涌いてくる
それは炎を背中にしょった、まるでお寺でよく見る
仏像のような形相の神様……いや仏様?
「あ、あ、あ、」
信じられない事態にオレは腰が抜けて座り込む。
”ずずず”と便器の上に全体像を現した”それ”は
オレに向かって再び言い放った
「力が欲しいんか」
「は……はい」
オレの意識はそこで途切れた
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