繰り返される絶望の朝

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それから他愛のない話をしているうちに、電車は学校の最寄駅に着いた。一つしかない出口の外には校門がすでに見えている。 そこに飲み込まれて行く学生の波の中で、電車から降りてくる友人を待つ生徒が点のように存在していた。忌々しい。数メートル先は学校なのだから校内で待っていればいいのに。 点の一つがこちらを見た。 私はこの瞬間が1日の中で一番嫌いだ。 「浩太!」 彼の名前を呼んだ少女はふわふわとした茶色のポニーテールを揺らして大きく手を振った。横に立つ彼が眩しいものでも見るような目で彼女を眺め、小さく手を振り返す。 点から波に戻った彼女は当然のように彼の隣に並んだ。彼の手に指を絡ませ、元気いっぱいといった声で私と彼に挨拶をしてくる。そこは私の場所だと叫びそうになる喉から、挨拶の言葉を返すのは苦痛でしかない。 「おはよ、美優」 ただの挨拶なのに、甘くて優しい声。その声は私だけのものだったのに。 電車の中でしたように瞼を伏せたけれど、彼が私の眦を拭うことはなかった。二人の時は気づいてくれた私の痛みに、彼女といる時の彼が気づいてくれたことはない。 それが今の、私と彼の距離。 --ああ、なんて、なんて悲しい世界。私の恋が叶うことはないのだから。 「じゃあ、教室行くな」 「ええ。今日はハンバーグ作るから手伝ってね」 「絶対早く帰る」 好物を上げると嬉しそうに声を弾ませた彼は、彼女の手を掴んだまま振り返って、明るい笑顔で私を呼んだ。 「楽しみにしてるよ、姉さん」 そして私は、仄暗い絶望を抱えて微笑むのだ。
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