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首謀者である彼女の死後、私へのいじめはぴたりと止んだ。
私は穏やかな気持ちで日々を送った。
それは、単にいじめが止んだからというだけではない。
高校に入ったり学年が変わったりすれば、あるいはそうでなくとも、またいじめられることになるかもしれない。それ以外の辛いことだってあるかもしれない。
けれどこの自殺デバイスさえあれば、その時にはいつだって楽に死ぬことができる。私は自分自身の目で、それを確かめたのだ。
あの時の彼女の死に顔は、穏やかで実に幸福そうだった。
いざとなればあんな風に死ぬことができるのであれば、もう何も怖くはない。
「姉ちゃん、最近楽しそうだな」
コンビニで新作スイーツを買おうとレジに持って行くと、いつぞやと同じ店員が声をかけてきた。
「な、やっぱ自殺なんかしなくて良かっただろ?」
「ええ、まあ」
鬱陶しいなと思いながらも適当に相づちを打っていた私は、続く店員の言葉に凍りついた。
「俺が言うのもなんだけど、あんな物がコンビニでほいほい買えること自体おかしいんだよ。もうすぐ未成年は使えないようになるって話だけど、未成年だけじゃなくて――」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってください! 未成年は使えなくなるってどういうことですか!?」
慌てて聞き返す私に、店員はなんでもないことのように答えた。
「どういうことって、ニュースでさんざんやってたろ? ちょっと前に中学生があれを使って自殺して以来、メーカーはこれまで以上に世間から叩かれて、それで来月頭には――って、もう明日か、とにかくサーバーの設定を変更して未成年は認証しないようにすることにしたって」
それから、どのようにして家までたどり着いたかは覚えていない。
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