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翌日。
登校早々に、足をひっかけられて転ばされた。犯人は彼女の取り巻きの一人である。
わざと聞かせているのであろうくすくす笑いが周囲から浴びせられる中、床にぶちまけてしまった鞄の中身を拾う。鞄のファスナーが壊されているため、転ぶ度に(というよりは転ばされる度に)こうなるのである。
最初の頃はファスナーを修理してもらったり突き出された足に気をつけて避けたりもしていたのだが、修理する度にまた壊されてお金ばかりがかかるし、避けると後でよけい酷い目にあわされるので最近はもう諦めてされるがままになっている。
散らばった私物の中には、あの自殺デバイスもあった。辛くなったらいつだって死ねるという安心感を得るために、持ってきていたのだ。
それを拾って鞄に戻しながら、ふともし自分がこの場でデバイスを使って自殺を図ったらクラスメイト達はどんな反応をするだろうかと考えた。
まさか死のうとするとまでは思わなかったと泡を食って止めるだろうか。それとも、死にたいならさっさと死ねば良いと嘲るだけだろうか。
そのどちらであるにせよ、試してみる気にはなれなかった。
死にたいならさっさと死ねと言われてそのまま死ぬのは惨めだが、まるで止めてくれと言わんばかりに皆の眼前で自殺を図って止められるというのもそれはそれでなけなしのプライドが許さなかった。
それに、自殺しようなどという考えとは無縁のところで生きている彼女達は、恐らく自殺デバイスを目にしたところでそれが何なのかも分からないだろう。
――少なくともその時は、そう思っていた。
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