序章

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 私には、物心ついた頃から、この世界はとても残酷なものでした。  私の家族は、みんなの言う家族とは違って、帰りたい場所も無いし、友達と外で遊んでる時は大丈夫なのだけど、帰る時間になると憂鬱で、そんな事が毎日毎日続くと、死にたいって思う様になって、毎日毎日どうしたら楽に死ねるのかとかを考え続けたけど、たいした知識もない小学生の私にそんな事解る訳もなくて、ずっと下ばかり向いて歩く様になりました。  その日も、夕方まで友達と遊んでいたのだけど、やっぱり家に帰らないと行けない時間が来て、ちょっとでも家に到着するまでの時間を稼ごうと、下を向きながらゆっくりゆっくり歩いていると、何かに思いっきりぶつかって、体重の軽い私は後ろに弾き飛ばされてしまいました。 「あっ、ごめん、大丈夫?」  頭上からの男の人の声に私が見上げると、そこには学生服を着た中学生だか高校生だかのお兄さんが立っていて、尻餅をついている私に向かって手を差し伸べてくれています。  私はお兄さんの手を掴むと、手助けされながらゆっくり立ち上がり、スカートに付いた砂をはたき落としました。 「大丈夫?怪我してない?」  そうお兄さんに尋ねられて、私が返事をしようとすると、 「……てゆうより、具合悪い?ずっと下向いて歩いてたし、顔色悪いけど。」 と、私が返事をするよりも早く、更に質問を重ねてきました。  喋るのが苦手で、頭の回転も遅い私は、何を質問されているのかまだ理解も出来ていないけど、 「……はい、大丈夫です。」 とだけ、答えました。 「なんか元気ないな~」  お兄さんはそう言いながら私の顔を覗き込んで、 「何か嫌な事でもあった?」 と、また尋ねてきました。 「いえ、大丈夫です。」  いきなり知らない人にそんな事を聞かれても困ります。
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