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「よし、元気が出る様に、魔法でも掛けようかな!」
お兄さんは明るい笑顔でそう言うと、
「ほら、顔上げて!」
と、手をパンパン叩きました。
私は訳も解らずに、それでも顔を上げると、
「今、俺は何も持っていないよね?」
と、言いながら、お兄さんは自分の手をひらひらと振りながら、何も持っていない事を確認させてきて、私は黙って頷きました。
「それでは、今から魔法をかけます。」
お兄さんが神妙な面持ちでそんな事を言うから、私は今から何が起きるのだろうとドキドキしながらお兄さんの顔から目が離せなくなりました。
すると、お兄さんは、両腕を大きく左右に広げて、すぐに目の前で、まるで虫か何かを捕まえるみたいな素振りを見せました。
そして、両手で作った空間の中にまるで何かがあるみたいに振ってみせながら、
「この中には何があるでしょうか?」
と、聞いてきます。
「……何もありません。」
私が答えると、
「本当に?」
と、お兄さんは悪戯っぽくニヤニヤ笑います。
「うっ…うん……。」
私が、もしかして中に何かあるのだろうかと困惑していると、お兄さんはそっと両手を開いてみせました。
そこには、可愛らしくて色鮮やかな金平糖がいっぱい詰まった小瓶がありました。
「凄い!何で!?」
私が興奮してそう叫ぶと、
「魔法だよ。」
と、お兄さんは嬉しそうに言いました。
「手品か何かじゃないの?本当に魔法なの?本当に?」
私は、半信半疑ながらも、きっと魔法に違いないと胸を高鳴らせながら、何度も確認しました。
「手品なんかじゃないし、魔法だよ?金平糖好き?あげようか?」
金平糖が大好きな私は、そう聞かれると思わず、
「大好き!欲しい!」
と、即答してしまいました。
お兄さんは笑いながら、私に金平糖の入った小瓶を手渡しました。
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