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「嬉しい!ありがとう!」
私は、嬉しくて嬉しくて、お兄さんに笑顔でお礼を言いました。
さっきまでの憂鬱な気分はいつの間にか吹き飛んでいます。
「良かった、やっと元気になってくれて。さっきのは、君を笑顔にする魔法だよ。」
お兄さんは、嬉しそうに、私の頭を撫でました。
そんな風に、誰かに優しくされた事の無い私は、それだけで胸がいっぱいになって涙が溢れそうになりました。
この世界に、周りの大人達に、絶望してしまっていた私は、こんな風に他人に優しく出来る人間も居るのだと、少し救われた様な、何だか温かい気持ちになりました。
「お兄さんは、魔法使いなの?」
私が尋ねると、
「うん。」
と、お兄さんは頷きました。
「私も、お兄さんみたいに、強くて優しい魔法使いになりたい……。」
いつの間にか、涙が溢れて止まらなくなってしまいました。
凍りついてしまった心を溶かされてしまったみたいに感じました。
私は、本当は、この世界に絶望なんてしたくないし、みんなと同じ様に帰る場所が欲しいし、周りに嫉妬したり嫌悪したりしてしまう弱い自分を変えたいし、誰かに許して認めて受け入れて欲しい。
この人みたいに、誰かを笑顔に出来る様な強くて優しい人間になりたい。
「君なら、絶対に魔法使いになれるよ。」
お兄さんは、優しく微笑みました。
「何があったのかは知らないけど…今は辛くて、泣きたくなる事ばかりだとしても、誰かを笑顔にする事で、自分もきっと笑顔になれるし、魔法は必ず自分に返ってくるから…。絶対大丈夫だから、諦めるなよ?」
私は、この時に、魔法使いに絶対になると決めました。
こんな残酷で絶望的な世界を自分で変えてみせようと思いました。
「私、絶対に魔法使いになるからね!」
私が笑顔でそう言うと、
「立派な魔法使いになれよー」
と、お兄さんは手を振りながら去っていきました。
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