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目を覚ましたあとも二階の自室でぐだぐだと時間を過ごしていた秀人だったが、空腹に耐えかね、ようやく部屋を出た。薄暗い廊下を進み、凝り固まった体を背伸びでほぐしながら階段を降りる。祖父母が建てた家は、梅雨時期ということで湿気を含み、階段はきしんだ音をたてた。
仕事を辞め、実家に戻ってからは夜型の生活が定着してしまった。実家といってもすでに両親は亡く、ここの主は兄夫婦だ。とうの昔に成人した弟が仕事を辞めて住み着いている。普通ならば説教の一つも言われそうな状況だが、気象管理で働きづめでほぼ家にいない兄は、たまに会った時もなにも言わない。義姉も、留守番してくれて助かるわ、と笑顔で言うような人だ。
そんな兄夫婦だから、こうして長々お世話になることになった。
今日の昼食はなにかな。
いつも秀人のために義姉が冷蔵庫に用意しておいてくれる昼食。義姉も大変な時期で悪いからと最初は断っていた食事も、ついでだからと、すっかりお世話になってしまってた。
なりそうになるお腹をかかえ、台所へと入った秀人。そこで彼は、こちらをじろりとにらみつける視線に迎えられたーーこの家で、唯一秀人に厳しい言葉をむける人物の視線に。
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