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「いただきます」
「はい、どうぞ」
ニコの返事に、秀人はオムライスは口へ運ぶ。
温めなおしたオムライスは卵が固くなっていたけれど、それでもおいしくて、黙々とスプーンを動かす。
台所に無理やりダイニングテーブルを押し込んだような食卓。そんな狭い空間に、食器の音と、部屋の隅に置かれたテレビから流れるニュースの音だけが響く。
珍しいな。
ニコが黙ってなにも言わないのも、食事中にテレビがついているのも。
自分と一緒にいる時のニコは、とにかく黙っていない。寝癖がついてる、とか、服がだらしない、とか、とにかく小言が止まらない。なのに、今日はいったいどうしたのか、なにも言ってこない。
ちらりと秀人がニコの様子をうかがうと、ニコはじっとテレビを見ていた。
食事中にテレビがついているのも珍しい。兄さんの教育方針で、この家では食事中にテレビはつけない。ニコもその決まりを守っており、前に秀人がテレビを見ながらご飯を食べていたら、ニコに怒られたことがあるのだ。
なのに、今日はテレビがついたままなのになにも言わない。
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