13. じゃじゃ馬は走る

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13. じゃじゃ馬は走る

 広島県広島市。  現在、新政会新島組──改め、『覇の国』による武力占領下にある都市。  血で濡れた都市の盤面に置かれた駒と、配られたカード。  賽の目を動かすのが人であるならば、出る際の目も、それぞれの意思と行動の結果である。  零治たちは今、広島市の近郊、海田市にほど近い安芸郡坂町のドック跡にいる。  彼らの母艦である轟震の内部では、J.C.M.D.Fのパイロットらと、それに参加した元自衛官らによる合同訓練が行われた。  それも、バーチャル空間内の模擬演習、限りなく実戦に近い形式の物だ。  しかしそんな中、零治たちの思いによらない所で動いているもう一つの勢力がある。  黎明の機士団──彼らもまた、覇の国占領下にある広島市を目指し、高速道路をひた走っていた。 「……」  話を、轟震の艦内に戻そう。  ぼやけた視界が目の前に小さな手の存在を覚え、彼女はゆっくりと身を起こす。 「……あぁ、……寝とったんじゃ私」  頭はまだぼうっとしているが、目覚めもほどほどに、菊花は目頭を押さえながら背筋を伸ばす。  目の前はぼやけた状態から、少しずつピントが合わさり、視界がはっきりしていく──。 「……」  そして、先程自分が知覚した「手」の持ち主。  英子は……無言だが、時折鼻をすするような音が聞こえる。  少なくとも菊花よりも先に目覚めたようだが、今はベッドから一歩も動きたくなさそうな様子だ。  周りを見回すと、真澄は部屋の外へ行ったのか、ここには英子の他は自分一人だけ──。  どうしたものかと思いながら、今は英子の傍に一緒についている事しかできない。  不意に、扉が開く。  その音に菊花はびくっと驚いたものの── 「委員長……びっくりしたぁ」 「夕凪さん、毛布を持ってきたのですが……目が覚めたんですね」 「うん、ついさっき……」  真澄の手には、別室から持ってきたであろう毛布が、きちんと畳まれた状態で抱えられている。 「いつの間にか、寝とったみたい──」  そう言いながら欠伸をする菊花の傍らに、真澄は畳まれた毛布を置く。 「英子ちゃんの様子は……?」 「鼻すすりよるし起きとるようなんじゃけど……今はそっとしといた方が良いみたい」 「解りました。……それでは交代ですね。夕凪さん、少し動いた方が良いかもしれません」 「うん……そうする」    
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