5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
最後の夏
「勇平。明日、ノースローの休養日でしょ?どっか遊び行こうよ。」
私は練習試合の帰りのバスの中で、うちの学校のエースである林勇平に、そう遊びの誘いを掛けた。
「あ?夏の大会直前に、何言ってんだお前は?」
「だって大会始まったら、負けるまで遊べないんだし。」
「アホか。」
と、コツンと額を小突かれる。
「痛!」
「ノースローでも、筋トレとか走り込みとか、やる事はいくらでもあんの。中本先輩達と一緒に野球やる最後の大会なんだぞ。遊んでる暇なんてないの。」
「ちぇ~…」
勇平はいつもこうだ。
特に彼女がいる訳では無いようだけど、頭の中は野球…と言うか、中本先輩の事ばっかり…
実は中本先輩の事が好きなんじゃないかと思うくらいだ。
まぁ、気持ちは解らないでもないのだけれど…
勇平は、中本先輩と野球をやる為に、他の強豪校からの誘いを蹴って、この山波東校に来たのだから。
私だって、中本先輩の事は大好きだけど、もうちょっと私の事も見てくれても良いのに…と、若干嫉妬してしまう。
勇平の中本先輩への気持ちは、あくまでも【尊敬】だと言うのは解っているのだけど、そんな簡単に割り切れるものじゃない。
最初のコメントを投稿しよう!