最後の夏

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最後の夏

「勇平。明日、ノースローの休養日でしょ?どっか遊び行こうよ。」  私は練習試合の帰りのバスの中で、うちの学校のエースである林勇平に、そう遊びの誘いを掛けた。 「あ?夏の大会直前に、何言ってんだお前は?」 「だって大会始まったら、負けるまで遊べないんだし。」 「アホか。」  と、コツンと額を小突かれる。 「痛!」 「ノースローでも、筋トレとか走り込みとか、やる事はいくらでもあんの。中本先輩達と一緒に野球やる最後の大会なんだぞ。遊んでる暇なんてないの。」 「ちぇ~…」  勇平はいつもこうだ。  特に彼女がいる訳では無いようだけど、頭の中は野球…と言うか、中本先輩の事ばっかり…  実は中本先輩の事が好きなんじゃないかと思うくらいだ。  まぁ、気持ちは解らないでもないのだけれど…  勇平は、中本先輩と野球をやる為に、他の強豪校からの誘いを蹴って、この山波東校に来たのだから。  私だって、中本先輩の事は大好きだけど、もうちょっと私の事も見てくれても良いのに…と、若干嫉妬してしまう。  勇平の中本先輩への気持ちは、あくまでも【尊敬】だと言うのは解っているのだけど、そんな簡単に割り切れるものじゃない。
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