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第一章 胎動
――CMD社半導体組立実験室。
真田がクリーンルームの窓ガラスを覗いて、CMD社の新商品インテリジェントパワーLSIの接合試作現場を眺めている。
クリーンルームには、シリコンウエハの切削加工装置がぎっしりと並べてあり、パッケージの信頼性評価装置も設置されている。この小さなクリーンルームで、半導体の組立製造実験が全て出来る様だ。クリーンルームの中で新光技術工業社の石川がCSPとフレキシブル基板電極の接合実験を行なっている。
※CSPはチップサイズパッケージの略語。
「この部屋のクリーンレベルは、どれ位ですか?」
若い女性がそう尋ねると、真田は振り返った。
「クラス一〇〇や」
「まあまあですね」
「そや、まあまあやな、それでも半導体の組立工程としては、じゅうぶんな環境クラスや、高い方とちゃうか」
「そうですね、クラス一〇〇でしたら拡散も出来るレベルですから、じゅうぶんだと思います」
「へぇー、劉さん、結構知っているんやな、半導体の勉強をしているんか」
「いえ、会議で通訳をしていると、自然に覚えてしまうんです」
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