プロローグ

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プロローグ

 ――空港を飛び立ってから十分程経っただろうか。  ポーンと効果音が鳴って、座席ベルトの着用サインが消えると、機内スピーカーから機長の挨拶がアナウンスされた。 『皆様、おはよう御座います。機長の田中です。本日はAXA航空を御利用頂きまして、ありがとう御座います。本日の天気は晴、当機は成田を離陸致しまして、ただ今、静岡上空を通過中です。本日のフライトタイムは約二時間三十分を予定しております。ゆっくりと空の旅をお楽しみ下さい』  日本語のアナウンスが終わると、続いて中国語のアナウンスが入った。 『女士們 先生們 早上好 歓迎光臨――etc――謝謝』  ※淑女紳士の皆さん、おはよう御座います。ようこそ――etc――ありがとう御座います。  ※etcはエトセトラ(色々)。  神崎は安全ベルトの金具を外してリラックスすると、振り向いて機内の小窓を覗いた。  四角い小窓の向こうには、澄み切った青空と果てしない雲海が広がっている。 「雲海って、とても綺麗ですね」  相川が窓側の座席で楽しそうに機外の風景を眺める。 「ああ、雲海は、まさに天空の海だからね」  神崎は相川の無邪気な横顔を見つめて微笑んだ。
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