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「塔の侵略さ。とうとう、本格的な行動に移るんだ。仲間数百万がかりで、塔を攻め入る。かみさまはかみさまだから、そんなことをしても無駄だと思っていたけれど」
自然と笑いがこみ上げてくる。
「けれど、ぼくらのことを見ていないのなら、大丈夫だよね?」
アルマディリディウムは何も言わなかった。否定も肯定もせず、ただ、コプトテルメスの声を聞いていた。
「さあ」
コプトテルメスは空を仰いだ。空のグラデーションがゆらゆら動いて、とても美しかった。美しいだけに、憎らしかった。
「待っていてね。ぼくのかみさま」
夏になった。
塔の侵略は計画通りに進んでいた。 否、むしろ順調が過ぎているかもしれない。秋ごろまでにどうにか塔の中に入り込む予定だったのが、すでに塔のそれなりの高さまで登ることができていた。何しろ抵抗がほとんどない。塔を壊すことだけに集中すればよかったのだから。
コプトテルメスは、今やコロニー軍の中でも一番の戦士となって、今日も破壊活動を行っていた。罪悪感もあったが、それ以上の興奮があった。さらに、壊せば壊すほど思考に熱が溜まっていって、それが罪悪感を消していくものだから、勢いは全く止まらなかった。
「おぉい!」
だから、呼ばれる声に気づくのに、少し時間がかかった。振り向くと、そこには仲間がいた。かれは、恐怖に満ちた顔でコプトテルメスを引っ張った。
「なんだよ? ぼくは今、壊しているんだ」
「早くコロニーに戻ってくれ! 敵が来ているんだ!」
「それがどうしたい、ぼくは」
「コロニーが壊されそうなんだ!」
さすがにそのことばで、コプトテルメスの熱は冷えた。驚いて、かれについていく。
そこには見たこともないほど巨大ないきものがいた。コプトテルメスに比べて、何百、何千、何万と大きかった。コプトテルメスは悲鳴をあげた。いきものの手が、コロニーに向けられる。
コプトテルメスは、思わず走り出した。敵とは違う方向へ。
思考が急速に冷えていく。敵は強大で、とても勝てるとは思えない。もし、ここでコプトテルメスが死んでしまったら、かみさまに会うことができなくなってしまう。親友が会うことのできた、コプトテルメスの愛するものに、会えないだなんて。そんなことは許さない。
だから、逃げるより他はなかった。
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