小説にほえろ!

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運営スタッフのリュウノスケからの書評を読み終えた私、山崎のぞみ十三才中学二年生は、アルコール度数九十度の強烈な自家製密造ウイスキーをかっくらった西部開拓時代のならず者のようにふらふらと部屋の中をさ迷い歩き、そして、音を立てて仰向けに引っくり返った。 インターネットの仮想空間では、十代の女子というだけでどこに行ってもお姫様扱いだったのに、運営スタッフのリュウノスケはまるで違った。 大人からこんな生ごみ以下の扱いをされたのは生まれて初めてだった。 よりにもよって、蝉の脱け殻だなんて。 死んだ。 完全に死んだ。 私、山崎のぞみは死にました。 私が死んだ理由、お分かりいただけましたか。 私は死んだ。文学的に表現するなら逝ったとするべきか。 少なくとも三十分の間、私は逝っていた。 三十分の間、身体の内に秘めた熱情を激しく奮わせながら、私は私の肉体に宿る霊魂のど真ん中ストレートを、億万もの膨大な数の単語達が目にも止まらぬ速さで貫通して通り抜けて行くのを感じていた。 うおーっ! 逝き倒れてから三十分が過ぎた後、私は吠えた。 書いてやる! あの運営スタッフのリュウノスケのヤツが文字通り「ぎゃふん」と唸るような本物の小説を、私は絶対に書いてやる。 新たな決意を胸に、私は明日からのアマチュア小説家としての執筆生活に胸を踊らせながら、布団に入ってやがて瞼を閉じた。 夢の中で私は、延々と腕立て伏せをマシーンのようにハイスピードで繰り返し、トランス状態に陥っている。 手足の生えた原稿用紙の妖怪が、暗闇の中にふわふわ漂いながら踊っている。 踊りながら笑い、そして私をけしかける妖怪原稿用紙の掛け声が聞こえる。 書くべし! 書くべし! 書くべし! 書くべし!
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