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苗木さんは、わかってほしい
図書室の雑誌コーナーでウロウロしていたあたしは、隣から射るような視線を感じ、訝しげに目をやった。
そこにはおどおどとした、小動物のような男子生徒がこっちを窺うように見ていた。
「なに見てんだよ」
「な、苗木、さん?」
あん? なんだこいつ。あたしのこと知ってんのかよ。てか、
「なんか用かよ」
「あ、いえ、その」
あたしはずいっとそいつに自分の顔を寄せた。そいつは一歩後ずさる。瞳を潤ませて、今にも泣きそうな顔をしている。あたしは無言のまま、じーっと睨みつける。
「な、苗木さんが、図書室にいるの、珍しいな、って」
ボソボソと今にも消え入りそうな声でそいつが呟く。
確かにあたしは高校に入学してから二年経ってるにも関わらず、ここを利用するのは初めてだ。友達に「なんか色んな雑誌置いてあるみたいよ、暇つぶしにはなるんじゃね?」と言われ、購読しているファッション誌の新刊でもあればめっけもんだなと思って、こうして足を運んでみたわけだ。
「まぁな。ここに入ったの初めてだしよ。ああ、てか、お前さ、ファッション誌ってどこにあるかわかるか?」
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