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「ふぁ、ファッション?」
「ああ、ハイティーン向けのやつ。フェミとかガーリーじゃなくてさ、ストリート系のやつあればいいんだけど」
「……えと、ごめん、何言ってるか、ちょっと」
「だーかーら、ファッションだよ、ファッション雑誌」
「あの、多分だけど、この図書室にそういうのはないと思う、よ」
「はぁ?」
あたしは雑誌コーナーの端から端まで目を凝らして具に調べていく。なにやら小難しそうな科学の雑誌とか、ニュースなんとか雑誌とか、そんなんばっかりだった。ゆるくパーマのかかった髪をかきあげ「ちっ」舌打ちを一つ。ねーじゃねぇかよ、ファッション誌。何が『暇つぶしにはなるんじゃね?』だ。
「無駄足かよ……ったく。あとであいつら説教だな……あん?」
渋面を作っていたあたしから、何かがじりじりと距離を置こうとしていた。さっきのやつだった。
「おい」
「は、はいっ」
「なんで逃げようとしてんだよ」
胸元に少し厚みのある雑誌を抱き少しずつ後退していたそいつが「びくんっ」と立ち止まる。
そのひどく怯えた様子が少し嗜虐的なあたしの琴線に触れた。あたしはにやりと口の端を釣り上げた。
「お前、何読んでんの?」
「……え?」
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