苗木さんは、わかってほしい

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「それ。その大事そうに抱えてるそれ、何の雑誌?」 「あ、こ、これは」  あたしは一歩詰め寄り、そいつからその雑誌を奪い取った。 「はぁん? 臨床心理学だ?」 「か、返して」  そいつに背を向け、あたしはペラペラとその雑誌をめくる。なになに、アディクション領域への参入ニーズ? CBT・REBTと動機づけ面接の導入? ポイッ、あたしはそいつに雑誌を投げ返した。 「わけわかんね。なんだそりゃ?」 「え、ええと、これは、心理学の一分野で」  あたしはポンッと一つ手を打った。 「ああ、心理テストか。無人島に一つだけ好きなものを持ってくやつとか、四つ葉のクローバー何個見つけたとか、そんなんだろ?」 「え、ええ? 当たらずといえども遠からずというか、なんというか」 「なんだ、お前、そういうの好きなのか。あたしも好きだぞ心理テスト。ちょっとあたしに出してみろよ、おい」 「え、えぇえ」  そうしてしばらく、あたしたちは図書室の静まり返った席で「あっは、当たってる! ウケるんですけど!」腹を抱えて笑い、注意した生徒を無視して、心理テストを楽しんだ。     
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