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目玉焼き
風呂上がりに真織がたどたどしい手付きで包帯を変えてくれている最中、居たたまれなくなった貴絋は突き放すように言った。
「いいから、さっさと仕事行けよ」
すると真織は貴絋の右手を優しく握りしめて笑う。
「当分夜勤はなくしたから。今日は貴くんの部屋で一緒に寝ようかな?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
突然何を言ってるんだ?
しばらく口を開けなかった貴絋に真織は言葉を続ける。
「いい?」
「ダメに決まってんだろ」
「即答しないでよ。お母さん傷付いちゃうな」
貴絋は戸惑った。今まで彼女が自分のために勤務形態を変えることなどなかったからだ。自分が窓を破損したせいで、また同じことをされてはかなわないと思ったのかもしれない。よほど危機感を持ったのかと、貴絋は自分のしてしまったことの重大さを考えた。
一応は謝った。だけど、もう二度としないとは誓えない。なぜなら自分の意思でしたことではないから。もう同じことをしないようにする対処法を貴絋は思い付けなかった。
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