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自分にとっては何の意味もない数字の羅列を見ていると、だんだん眠たくなってくる。光一は集中していて声ひとつあげないし、退屈だ。
20分ほどが経過した頃、光一がやっと顔を上げる。
「できたー! 辻くんどこまでできた……あれ」
貴絋はつい先ほど入眠したばかりであった。小さなテーブルに広げたノートの上に顔を乗せて器用に寝ている。
ノートはまだ真っ白いままだった。
光一は、起こすべきか迷ったが、それも可哀想なので暫く放って置くことにした。光一はランドセルから次の宿題を取り出しにかかる。
漢字のノートを開いたとき、貴絋が起きてこっちをじっと見ていることに気がついた。あまりにも気配がしなかったので思わず驚きの悲鳴をあげてしまった。
「びっくりしたよ!」
「ごめんごめん」
無邪気に笑う貴絋の笑顔を見て、得体の知れない違和感を抱く。彼はいつもこんな風な笑い方をしていたか?
「ねえ光一くん、さっき美味しそうなパン食べてたじゃない? あれ私にもちょうだいよ」
光一は一瞬固まってしまった。
なにこのキャラ変。
「なんで突然オネェなの」
「やだ、間違えちゃった」
二三回咳払いをしてから、貴絋は言い直す。
「オイ光一さっきのパンオレにも寄越せよ」
明らかにおかしい。何かの冗談なんだろうか? それにしたって全然笑えない。
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