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「央子ちゃんのスイーツ作りの腕はプロ級なんだから!」
何を根拠にそんなことを言うのか知らないが、高橋チカは自分の事のように自慢げに言い切る。
「いらねえ。悪いけど」
普段の千倍優しく断ったつもりだった。いくら他人とは言え、相手は年端もいかないそれも女だ。相手が中年のおっさんなら厳しく捨て台詞を吐き立ち去る所だが、なぜかダイアナの前ではそれができない。
しかしダイアナは引き下がらなかった。
「あなたの為に甘くないのを作ったのよ! それもタカヒロの好きな焼き肉入り! レシピ作るのに二年の歳月を要したの……食べないとは言わせないわッ!」
「焼き肉のこと知ったの昨日だろ! それに俺、知らない奴の手作りとか無理、お前どうせ無免なんだろ」
貴絋のその言葉を聞いた瞬間、ダイアナの元々大きな目がさらに大きく見開かれ、そこへじわじわと悲しみが集まってくるのが見えた。
――げ。泣くのかよ!?
貴絋は体ごと思い切り視線を背ける。言葉を失ったダイアナの代わりに、チカが反撃に出た。
「辻くん酷いじゃん! 央子ちゃん一生懸命作ったのに!」
「……別に頼んでねーだろ」
「何ですって……!?」
チカが怒って一歩前に踏み出したとき、ダイアナが腕を出してその動きを制する。
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