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『こわーい! でもね、私、もう死んでるもーーん!』
突き抜けるほど明るいララの声に果てしない怒りを覚え、思わずトイレの壁を殴った。一瞬でもこの女に感謝の気持ちを持った自分が許せない。
□
イライラしながら教室のドアを開けると、すでに授業が始まっていた。多数の視線を受けながら、貴絋は静かに自分の席につく。
「辻くん、何処に行ってたの? チャイムが鳴ったら席についてなきゃダメじゃない」
花枝が厳しく声を上げる。
「……トイレ。あー閉じ込められなくてよかった」
その言葉を聞いた花枝は顔を赤くして先程の勢いもどこへやら、大人しく授業を再開した。
どうしたのかな? と言わんばかりの雰囲気が教室に広がる中、明吉と光一だけが真実を知っていた。
貴絋はどうやったらララを成仏させることができるのか考えていた。もうこれ以上自分の体で好き勝手されてはたまらない。何か未練を残してこの世に居るというのなら、その未練をはらしてやればいいのだ。しかしララのことでわかっていることはまだあまりない。甘いものが好きだと言うことだけだ。逆に言えば、その個性が未練に繋がっている可能性が高い。その他のことは覚えていないんだと、彼女自身が言っていたからだ。
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