焼きうどん

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 心の中では「うわああー間に合わねぇー」と叫んでいる貴絋だが、彼女にはまったくその焦りを感じさせてはいない。 「今日の調理実習でね、私たちの班はニクジャガを作る予定だったのよ。それが……ああ……思い出すのも辛い……私はなんてクソッタレなの……持ってくるはずの材料を忘れちまったのさ! Shit!! 班長の私がなんて失態。|アマゾネスprimeで注文を試みたけどここ学校のクセにfreeWi-Fiがないのよ! 笑っちゃうでしょ? まさかこの私が神に見捨てられる日がくるなんてね。班員に打ち明けられるはずもない……だからここでこうして悔し涙を流してたってわけよ」  ――なんてこった。こいつも仲間(アミーゴ)か。 「……立て、行くぞ」  貴絋は自分の靴入れから、緑色のスニーカーを乱暴に出して床に落とした。 「行くってどこに?」 「すぐそこのスーパーだよ! 早くしろ、時間がない」 「でも……私、一人で買い物なんかしたことないの!」 「だから俺も行くんだって。さっさと靴履けよアンチに個人情報売るぞ」  ダイアナの胸は震える。貴絋の言葉が、急速に彼女の体温を上げていった。  ――なんて優しいのタカヒロ! 私のピンチを察知して助けに来てくれたんだわ! もはや運命と呼ばずになんと呼ぼう……。 「僕も行く!」     
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