焼きうどん

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 光一は辺りを見回したが、ダイアナのいる気配はない。 「ほら早く」  光一の中華スープを握ったままの腕を引っ張ると、貴絋はレジに向かう。もしかしたら彼女の方が先にレジにいるかもしれないし。  レジに並ぶと、違うレジの列の外れにダイアナを見つけた。 「神森さん! こっちこっち」  ダイアナはすぐに二人に気がついてこちらへ歩み始めた。 「団体行動乱すなよな」 「君がそれ言っちゃうんだ……」  ダイアナは決まり悪そうに言った。 「……それがね、まずいことになったのよ」  彼女の細い腕には、赤いキャップの味醂が握られている。 「何だよ」 「お金忘れたとか? 僕立て替えるよ」  ダイアナは二人に味醂を良く見える位置まで持ち上げ、言った。 「これお酒だから未成年には売れないんですって」  二人は一瞬固まったあと、ほとんど同時に声を上げる。 「嘘だろ!?」 「嘘でしょ!?」 「私もさっき同じ事を叫んだわ……どうしよう……これで本当にゲームオーバーだわ」  ダイアナの瞳にまた涙が揺らぎ始めた。  光一は目の前で泣きそうになる女子をどうしたらいいかわからず、オロオロし始める。そのとき、貴絋が言葉を発した。 「俺が買う」  ダイアナと光一は一斉に貴絋を見た。     
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