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「光一くん! た、立場とかじゃなくて……好き嫌いをしないで食べようってことなのよ……ね? わかるよね」
花枝は顔を赤くして拳を握りしめた。けれどまだ若い女性のそのポーズには、なんの凄みもない。
「ふーん。箸貸して」
光一の返事をする間もなく、貴絋は箸を勝手に取るとその鯖を一口で食べた。
ポカンとした表情の花枝と光一を見て、貴絋は口の端を親指で拭いながら言った。
「これで問題ないだろ」
「そういう問題じゃないから!」
先に我に返った花枝が急いで言い返す。
「先生だって嫌いなもんくらいあるんじゃん?」
「そりゃ……あるけど我慢して食べます! 先生は大人なんだから」
「俺らまだ子供だし。ってか、そんなに怒ると眉間にシワ残る」
「もうっ! 知りません!」
花枝は怒ったパフォーマンスで教室を出ていった。それを見た光一と貴絋はしばし目を合わせた後、ケラケラと笑い合った。
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