焼きうどん

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 光一は驚きを隠せなかった。そんな素振り一度も見せなかったのに、自分の知らないところでそんな事になっていたなんて。そして若干の寂しさが澱のように浮き上がるのを感じた。 「そう付き合ってるの……。これは私のカントリーでは結構有名な話よ。あなたの家ラジオないの?」 「ラジオで放送されてるんだ……ごめん知らなくて」 「誰にだってミスはあるわ、気にしないで。それで、彼の好きなタイプわかる?」  光一は頭を捻って考えたが、今までに貴絋とそういった話をしたことがなかったし、見当もつかなかった。 「ごめん、わからないよ」 「そう。いいわ、今度さりげなく聞いておいて。お願いね! ちなみにあなたはどうやってタカヒロと仲良くなったの? 押したの? 引いたの? さあどっち?」  言いたいような、言いたくないような、変な気持ちだった。だけど、妙に押しの強いダイアナに尋問されると、言わなければならない雰囲気になってしまう。 「辻くんは……最初は結構人見知りする方かも。だけど仲良くなって自分が内面を見せれば、それに応えてくれる人だと思う。自分から積極的に関わろうとするタイプじゃないから、グイグイいくのがいいんじゃない?」 「それ得意中の得意だわ!」 「だろうね」  光一が視線を貴絋の方へと戻すと、丁度レジ袋をぶら下げてこっちへ歩いてくるところだった。二人はすぐに貴絋の元へと駆け寄る。     
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