焼きうどん

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「どうだった辻くん!」 「買えたの?」  貴絋はフンと不敵な笑みを浮かべて言った。 「……大人連れて来いってよ」 「だろうね」  ダイアナの顔色がいよいよ悪くなり始めた頃、光一が時計を見て、もう時間がないと怯える。 「もういいわ、帰りましょう……このままではあなた達まで遅刻してしまうもの」 「本当にいいの?」 「いくないけど仕方ないでしょ! どうしようもないんだから! 私が悪いんだから……ッ! 自業自得よっ!」  ついに泣き出してしまったダイアナを見て、貴絋は心の内で思った。  ――女って本当、得だよな……。 「行ってくる」  貴絋は再びレジの方を向くが、光一はそれを呼び止めた。 「今度はどうするの!?」 「……成人に当てがあるから……ただしお前ら外、出といて」  その言葉に、光一はすぐにピンと来た。きっとララに憑依された体でレジを通るつもりだと。しかしどうもうまく行くとは思えない。たとえ精神が成人だからと言っても、身体は貴絋の、10歳の少年なのだ。それでも貴絋が視線で外へ出るように促してくる上、他に案も思い浮かばない以上は、彼の指示に従う他ない。  光一は泣きじゃくるダイアナを連れてスーパーの外へ出るのだった。  □     
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