肉じゃが

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「ありがとう。このご恩は一生忘れません」  貴絋はお釣りを受けとるとき、その女性の手に唇を落とした。 「ひゃあ!」 「失礼。貴女があまりにも美しかったから……では」 「また是非お越しくださいませ……」  □  気が付くと右腕に重みを感じた。ぶら下げたレジ袋の中には、精算済みの味醂が入っている。一体どうやって買ったのか知る由もないが、貴絋は安堵の息を漏らすと二人が待っているスーパーの外へと急いだ。 「辻くんその袋! 買えたの!?」  貴絋の姿を見るなり光一が叫ぶ。 「楽勝」 「タカヒロ! ありがとう! あなたって最&高だわ」  ダイアナが笑顔を取り戻したのを見て、貴絋はひと安心する。  こうして三人は無事に買い物を済ませた上、次の授業までに戻ることができた。  ――また借りを作っちまった。  少しだけ憂鬱な気分になってしまった貴絋だったが、ダイアナの嬉しそうな笑顔を思い出すと、不思議と後悔はしなかった。  □ 「ちょっと待てよ。お前なんでキャ○ツなんか持ってきてんの」  半分が怯え、半分が怒りに満ちた表情の貴絋は、今からキャベツを切ろうとしている光一の手を止めた。 「なんで伏せ字!? 焼きそば焼きうどんと言ったらキャベツ入れなくて何入れるの?」     
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